民間偵察衛星を軍用のスパイ衛星として買い上げを検討
米国防総省が民間偵察衛星を買取り、政府専用のスパイ衛星として運用する方向で最終調整入りをしたことが1日までに明らかとなった。
現在、米国政府部内で購入担当窓口を米国防総省にするのか、米空軍にするのか、それとも米国家偵察局にするのかで、調整作業が行われており、購入窓口が決定次第、今週中にも正式発表が行われる見通しだ。
米国政府は米国家偵察局が運用主体となり、世界中のどの地点であっても1日、1回以上、スパイ衛星が上空が通過し、細密な観測画像を撮影できるように、複数の衛星フリートから構成される監視網を構築、運用している。
しかし、2006年12月に打ち上げられた次世代スパイ衛星の実験衛星「NROL-21(USA-193)」は軌道投入直後に通信が途絶(その後、制御を失い人口密集地域に落下する恐れが生じる事態となったため今年の2月に迎撃ミサイルにより撃墜)するなど、運用に伴う障害なども多く発生する状況となっており、多数の衛星網を維持するためには軍用のスパイ衛星並みの高解像度を持つに至ってきた民間の衛星を買い上げる方が安上がりと判断した模様だ。
民間の偵察衛星の分野では新技術を導入することで米デジタルグローブ(DigitalGlobe)社が昨年9月に最大解像度が36平方センチの偵察衛星を打ち上げたのを皮切りに、米ジオアイ(GeoEye)社は解像度17平方センチの衛星の開発に成功。来月の打ち上げに向けて最終準備段階に入るなど、ここにきて軍用と民生用の格差はほとんどない状況ともなってきていた。
こうした民間の偵察衛星は画像のブレをなくすために、極軌道衛星としては珍しいスタートラッカーを搭載し、その都度、軌道の誤差を細密に補正するという技術を導入することで、専用の軍事偵察衛星よりも小型のカメラレンズでも高解像度の画像の撮影を可能としている。
画像は8月22日に米カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地からの打ち上げが予定されている米ジオアイ社の偵察衛星「GeoEye-1」の軌道上での想像図。
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